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ProjectMeltDown

ProjectMeltDown

VeNus ACT3

ProjectMeltDown
VeNus Fantastic Powder
VeNusact-3


       照明の変化。

       暗いながらも夜のようなほのかな明るさ。

       ビーナスと歌のお姉さんと真希が並んで座っている。

ビーナス  あの日素敵な夢を見た僕

おねえ   君といられるだけで幸せだと思っていたのに

真希    こんなにいい感じになれるなんて

ビーナス  あまりに驚きで

おねえ   あまりに嬉しくて

真希    いつまでもだらだらと

ビーナス  詩をつづっている

おねえ   ・・・恋する日々が夢だと言うならば

真希    僕の人生ってなんなんだろう

ビーナス  好きになって傷ついて

おねえ   好きになって傷ついて

真希    また 違うのかって

ビーナス  枕を濡らし

おねえ   女のひとより ずっと女々しい僕は

真希    こんな日がくると

ビーナス  ちょっと調子狂っちゃう

おねえ   愛されるなんて ちょっと傲慢なことで

真希    自分が何を見ているかの方が大事なようだ

ビーナス  汚らわしい言葉を捨てて

おねえ   美しい言葉を持つ

真希    同時に

ビーナス  嘘の美しい生き方を捨て

おねえ   本当の泥臭い生き方をつかむ

真希    それが本当の美しさだと思いたいから

ビーナス  僕はあいつと

おねえ   同じ明日を見ることにした

真希    見つめあう愚かしさより

ビーナス  同じ何かを一緒に見る方が

おねえ   ずっとずっと大事

真希    だから

三人    ふたつのビーナスは一つにに重なった

       松風が入ってくる

松風    いつしか僕はこのスカスカな世の中を乗り越え、

      ぎっしりな毎日を作ることだろう。

      どんな、美しい言葉にも負けない。

      確かな僕でありたい。

      ・・・さとし殿はどうなったのですか。

おねえ   お勉強中。

真希    経済力かあ。それはそれで・・・

ビーナス  そうでもないわよ。

      大切な人を守るには底力が必要なのよ。

真希    御苦労なこった。

松風    おかげで時は止まったままですな。

真希    そうね。(ドリラスのリセットをがちゃがちゃする)

      いっこうにクリアする気配ないし、どうなっちゃうのかなあ、私達。

おねえ   もうちょっと待ちましょう。彼が変わるまで。

      この町と同じよ。

ビーナス  そうね。街と男って似てる。

松風    何がですか?

三人    女次第。

松風    ほお。

おねえ   男の価値ってさあ、頭んなかにどんだけいい女がいるかなのよね。

松風    じゃあ、このさとし殿の一番奥にいるあなたがたは?

真希    そりゃもう、

三人    いい女よ。

松風    ここは美しいところですね。

ビーナス  あら、腹黒い女たちの世界よ。

松風    さて、拙者どもはどうしましょう。

おねえ   お話しでもしてましょう、智司君の柔軟性のある恋愛のために。

真希    真直ぐ君だからなあ。

ビーナス  ねえ、旅でもさせてみない?

おねえ   どんな?

ビーナス  手に入りそうで入らない女探しの旅。

真希    軟派修行かあ。

おねえ   まだ早いわ。開き直ってないし。

ビーナス  あとはねえ、雪江とイタチごっこ。

おねえ   そっか。どこまでもどこまでも。

真希    運命の人に出会える時まで。あー、可哀相。

おねえ   いいのよそれで。

松風    成長には終わりがありませんからね。

真希    で、貴方は?

松風    中途半端な道徳心です。

ビーナス  理想の女性像です。

おねえ   指令塔です。

真希    女友だちです。

松風    ここはすっきりしてますね。

ビーナス  結局全部ここできまるのよ。

      見えざる女達の議会。

      ねえ、ちゃんと見てるのかしら?

おねえ   見ては・・・いないかな。

真希    聞こえているかしら。

おねえ   聞く気があればね。

真希    聞く気があったって。

おねえ   無理よね。

松風    私がいる限り。

      そうですね。

      じゃあ、私が消えます。

真希    いいの?

松風    ここは女神の城です。

      私はもう、いいでしょう。

      愛のない紳士はただのスカスカです。

ビーナス  かつては王様だったのにね。

松風    それは言わない約束です。

      彼には寂しい思いをさせますが、もう、いらないでしょう。

おねえ   (そっぽをむいてる)

松風    そんな顔しないでください。

      必要になったらまた産んで下さい。

おねえ   (うなずく)

松風    では。・・・お達者で。(去る)

       しばし沈黙。

       ちょっとすると歌のお姉さん、ぼそぼそ歌い出す。

       ふらりとリラがあらわれる。

リラ    智司の為とはいえ。いつもこれだ。

       リラ、歌のお姉さんの頭をなでる。

       お姉さんすこしきげんなおる。

       お姉さん、歌い上げる。

リラ    こんなの、あってもなくても本当は一緒なのに。

真希    夢落ちは嘘よね。

リラ    夢か幻か現実か、嘘か真実か、本気か遊びか。

      それは智司が判断すればいい。

      おれたちは施行錯誤を手伝えばいい。

      人間てえのはたいへんだな。

ビーナス  楽ではないけど。

リラ    楽しみようはある。

ビーナス  いい男。

リラ    人生は強気で行くもんだよ。

真希    哲学ね。

リラ    生きることと恋することってかぶってるからさ。

おねえ   ちょっと、借りていい?

真希    ・・いいよ・・・

おねえ   ありがと。

       歌のお姉さん。リラの胸を借りる。(うでは肩です)

リラ    昔のさとしの理想の姿。

おねえ   ・・・私が甘いばっかりに、消せなかったの。

リラ    いいやつだった。うまくとりつくろってまた使えばいいよ。

おねえ   しばらくいいや。

ビーナス  ごめんね。わたしばっかりいい思いして。

真希    いいのよ。立場がそれぞれなんだし。

ビーナス  いつか。消える、私。

真希    時々大きくなっちゃうわたし。

リラ    それもいいさ。

ビーナス  消えるのに頑張る私。

リラ    忘れないよ。

おねえ   愛する人を売る私。

リラ    立派なことだよ。

おねえ   悪いひとかな?わたし。

リラ    偉い人だよ。・・・女神達はみんな偉い。

ビーナス  そういう貴方も。

リラ    ある意味ビーナスなんだけどね。

おねえ   卑怯もの。

真希    よく知ってる。

おねえ   はい。(リラを真希に渡す)

リラ    じゃあ俺もさとしの一部なんだ。

真希    いまさら何よ。

リラ    でもここに智司が来ないってことは、他の形を模索してんのかな。

ビーナス  進化してもらわなくちゃ。

おねえ   見てみたいな。

ビーナス  何を。

おねえ   メルトダウンするとこ。

ビーナス  2人で溶け合う愛の形。

真希    そこまで行けばこわいものなしね。

リラ    ひとまず世界は元の形にもどるんだろうね。

おねえ   裏面のクリア条件は。

リラ    イノベーション。イヤ、どっちかってゆうとエヴォリューションかな?

真希    進化?

リラ    そう、進化しつづける覚悟ができたとき、

      さとしの新しい生活がはじまる、

      何もない平坦な生き方、若者には似合わないよ。

ビーナス  多少、冒険してもね。

真希    許されちゃうからね。

おねえ   あたらしいいこまさとし。

リラ     ギッシリって噂だね。

全員    ふふ。

ビーナス  目には見えない進化が起こる。

リラ     さ、そろそろおれたちの声が聞こえるようになるぞ。

ビーナス  構想力って大事だぞ。

真希    平常心て大事だぞ。

リラ     甲斐性って大事だぞ。

おねえ   自信て大事だぞ。

リラ     あ、揺れてる。

真希    さあ、おいで智司君。

ビーナス  いい女が待ってるぞ。

リラ     根性出せよ。

おねえ   一緒に考えよう。

      ・・・じゃ。歌おうっか!

ビーナス  どうぞ。

真希    (イントロをくちずさむ)

ビーナス  (あわせる)

おねえ   一緒にどうぞ!(で、歌う)

       リラが箱を開ける。が、すでにさとしはいない。

       別の方向をみると、智司が入ってくる。

さとし   気付いたよ。

      あたりさわりのない行動が当たり障りのない毎日を作ってるんだ。

      だから、はじめるよ。

      勇気ある行動で、刺激的な毎日。

       リラとさとし互いに腕を交わす。

リラ    後ろで見ておくよ。

       リラ、後ろに座る。

       さとし、うでを差しのべ、歌のお姉さんを傍らに置く。

       動けなくなってる真希を撫でる。すると、真希座る。

       とまどってるビーナスの両肩に手を置く。ビーナス座る。

       振り向き、歌のお姉さんに強い視線をあてる。で、座らせる。

       そして、さとしは前を向く。お客さんに強い視線を当てる。

さとし   好きだ。

       演出的には静かに盛り上がる。

       おねえ、ビーナス、真希は総立ち。おのおの惚れ顔。

さとし   おれはお前が好きだ。

      だから、つきあいたいと思う。

      俺も変わる。そしてお前も変わる。

      もう一度言う。・・・好きだ。

       もう一歩盛り上がる演出。

       ちょっとして、智司が片手を高く掲げる。

       そして、パチンと鳴らす。

       総員、さとしと同じ方向を見る。惚れ顔から真剣な眼差しになる。

       ちょっとして、おねえがパッと横を見る。みんなも続く。

       すると音が静かになり、松風がいる。

松風    愛川雪江さんからの電話です。(電話渡す)

さとし   ああ、もしもし。

      ありがとう。

      きょうからよろしく。今日?

      ひとまず、相模大野で待ち合わせなんてどうかな。

      じゃあ、一時間後。

      愛してるよ。(電話切る)

総員    うわ。スカスカ。

さとし   いや、ギッシリ。

総員    おおお。

       笑い声の分、ちょっと待ってから。

さとし   待ち合わせをしましょう。

全員    合わなければいけません。

      気持ちを高めあうために

      愛を高めあうために。

      僕はすこしはやく行って待っています。

      遅刻してもいいです。

      待つのも楽しいです。

      デパートを抜けて

      虹の架け橋を降りて

      コリドーを歩いて

      突き当たりの白いビルで待っています。

      ぼくはいつものテラスで

      コーヒーを飲んで待っています。

      貴方を待つ時の期待と不安を

      コーヒーで落ち着けながら

      銀色の椅子で待っています。

      駅に出入りする人々や

      きれいなディスプレイを見ながら

      あなたを待っています。

さとし   待ち合わせをしましょう。

おねえ   最後の荷物が届いたら、

松風    あなたに愛を伝えます。

リラ    僕が先に「好きだ」なんていうから、

ビーナス  きっと君は戸惑うでしょう。

真希    返事はこれで変わります。

おねえ   何も伝えない僕と

ビーナス  すべてを打ち明けた僕とでは、

さとし   君の心が変わるから。

真希    相模大野で待ち合わせするのと、

ビーナス  君が振り向くこととは良く似ています。

総員    君の心の一番奥の

      愛しい人の待ち合わせ

      君の心の一番奥の

      相模大野で待っています。

さとし   君の心の一番奥で

おねえ   愛しい人が待っている。

さとし   待ち合わせをしましょう

ビーナス  君の心の一番奥で

さとし   僕は待っています。

       ちょっとして、インターホン。

       振り向いたところで曲入る。

       また全員でお客さんを眼でコロス。

       照明、落ちていく。

       幕



ProjectMeltDown
原案 雷音寺 翔汰狼「Project"MeltDown"」「Planet In Your Eyes」
原作 毬宇斎 悟達「瞳に映る惑星」
VeNus Fantastic Powder 小劇場公演のための戯曲「VeNus」淵源座旗揚げ公演版
2000年盛留真悟作品


VeNus act-3

”VeNus" (C)MoridomeShingo2000,ALGI Products1996-2000

■この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは関係ありません。
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